10章.私が派遣先から戻ってきた時のこと

こんにちは、久川和人です。

前回は、
「派遣先で後任者への引継ぎが終わり、派遣終了後。お客様からは、仕事が出来ないというクレームがあり、後任者に交代させられた形となった。派遣終了後の翌日、自社へ出勤しようとしたが、会社へ行ったら何をするのかが知らされておらず、不安と恐怖で会社を休んでしまった。」
のところまでお話しました。
（前回の日記→私が後任者への引継ぎが終わった時のこと）

今回は、私が派遣先から戻ってきた時のことについてお話していきます。

 

逃げると状況は悪くなるということ

派遣終了後の翌朝。上司や同僚に、「体調不良で休みます。」というメールをして、布団の中に入っています。

「会社に行ったら、私は何をするのか。」という不安と恐怖を感じながら、何もすることができません。

派遣先に行っている間に、私は降格して、部署も異動になりました。

異動先の部署も今までとほどんど仕事の内容は変わらないのですが、その部署にいる同僚もほどんど知らない人たちなので、交流はありません。

そのこともあって、不安と恐怖が一層強くなっているのだと思います。

この不安と恐怖を解決する唯一の方法は、会社に行ってどうなるのかを知ることなのですが、会社を休んでしまいました。

いつも不安と恐怖を感じることがあると先送りしてしまう。先送りしたところで、状況が良くなることはありません。むしろ、先送りすると状況が悪くなります。

今回の場合は、会社に出社する最初の日に休んでしまったので、翌日会社へ行きづらくなります。

もしかしたら、今日は出社したら、今後何をするかについての説明が予定されていたのかもしれないし、商談で外出しなければならなかったのかもしれないし、など勝手な想像をして、余計な不安がどんどん増えてしまう。

その増えていく不安の中で、ますます会社へ行くことができなくなっていく。

そんな悪循環になることは、休む前からわかっているのに、会社を休むという選択をしてしまう自分が、布団の中にいるのでした。

なぜ行動できないのか。行動した方が楽になることはわかっているのです。でも、結果を見たり、その場にいるということが怖くて先送りしてしまう。

私は立ち向かう勇気がなく、かといって、逃げても逃げ切れるわけではないのに、それでもいつも逃げてばかりで、自分で自分を追い詰めていくような、そんな日々でした。

 

異動後の初出社

その日は結局布団の中から出られず、一日中、不安と恐怖の中、寝ていました。

せっかく休んだのに、どこか気晴らしに遊びに行ければ、少しは楽になれるのかもしれません。

でも、そんな気力もなく、次の日の朝を迎えました。

そして、その日の取った行動は、会社へ行くということです。

いつもよりゆっくり起きてしまいましたが、これから支度をすれば遅刻をせずに間に合う時間。

不安と恐怖に襲われたまま、とにかく、支度をするという行為だけに集中し、支度が終わりました。

「今日は会社へ行ける。」

この気持ちが変わらないうちに家を出ます。

「会社へ行ったら、私はどうなるのだろうか？」

そのことだけが、胸の中いっぱいに広がっていて、

「やっぱり今日も休みたい。」

という気持ちになっていきます。

外はいつものように、慌ただしく駅へ向かう人たち。感情とは裏腹に、その中に溶け込むように私も駅へ向かいました。

駅が見えてきました。

改札をくぐりました。

駅のホームで電車を待ちました。

電車が来たので乗りました。

電車を乗り換えて、改札を出ました。

周りの人たちと同じように、同じような流れに乗って、会社に近づいていきます。

会社に近づくにつれて、不安や恐怖がますます大きくなっていき、息苦しさも強くなっていき、胃も痛くなってくる。

ストレスから、自律神経のバランスが崩れていくのがわかります。

引き返したいという気持ちが何度も何度も襲ってきて、私の足を止めようとしてきます。

でも、会社へ行くしかないという気持ちで進むしかありません。

心の中では、様々な障壁を乗り越えながら、足を止めずに歩いていき、遂に会社に着きました。

 

 

私の席はどこ？

会社のビルに入り、自分の部署に行きます。

私は派遣中に異動になったため、異動先の部署に行くことが無かったため、座席がありませんでした。

そのため、座る場所がわかりません。

「私の席はあるのだろうか？」

そんなことも不安になって胸が苦しくなります。

自分の部署を見渡すと、私の上司が出社していました。

「とりあえず、上司に挨拶に行こう。」

私は、初めに上司に挨拶に行きます。

上司の前に立ち、

「昨日は休んでしまい申し訳ございませんでした。本日からよろしくお願いいたします。」

と挨拶をしました。

上司は迷惑そうに私を見てから、のちほどやってもらう仕事について説明するとのことで、近くにあった打合せ用のテーブルがある席で待っているように言われました。

「私の席は？」と思いましたが、打合せ用のテーブルにあった椅子に黙って座ります。

30分ぐらい待ったでしょうか。

奥の方の座席で、荷物を移動させているのが見えました。

私の席は準備もされていなかったようです。

しばらくすると、事務担当の方が私に話しかけてきました。

「席はこちらですよ。」

私は、荷物を移動していた席に案内されます。そこは、急遽荷物をどかした場所なので、机や椅子がホコリだらけでした。

「とりあえず、机や椅子のホコリや汚れを拭いてきれいにしよう。」

そんなことしか考えませんでした。

事務担当の方に、ぞうきんとウエットティッシュをもらい、きれいにしたところで座りました。

私の席の隣は空き席です。

周りを見ると、みんなとっても忙しそうです。私からは話しかけないし、周りの人も話しかけてきません。

仕事用のノートパソコンは、一人1台ずつ支給されていて、部署が変わってもそのまま使用します。

結局その日は、上司からは、異動後の初日なので事務処理などをするように言われました。

実際のところ、事務処理などすることはほどんどないのです。そのため、パソコンを立ち上げて適当に過ごします。

前にいた部署はすぐ近くだったため、前の部署の数名が私の所に来て、話しかけてくれました。派遣先での私の扱いをみんな知っていて、同情してくれたことは嬉しい限りです。ですが、みんな忙しいので、すぐにどこかへ行ってしまいます。

でも、私は、派遣期間中、お客様からのクレームが社長の耳にまで入っていたこともあり、私の評判は大変悪くなっていました。私の上司も、私は邪魔者のようです。

そんなクレームはありましたが、派遣先で問題を起こしたことはありません。
システムの保守・運用という仕事でも失敗したり、トラブルを起こしたりしたわけでもありません。

同じ派遣されたメンバーからは、私がシステムに詳しく、教えたりもしていたので感謝されてもいました。

ただ、派遣先の窓口となったお客様との相性が悪かったこと。そして、私がうつ病ということもあり、さらに窓口のお客様との相性の悪さもあって、私が休むことが多かったこと。このことが大きな問題ではありました。

そして、自社に戻ってきて、今日の待遇を受け、不安と恐怖よりも、みじめな気持ちが強くなってきました。

時間はみんな平等です。仕事をしてもしなくても同じように時間が過ぎていきます。でも、1秒の長さが10倍にも感じられる、そんなゆっくりとした時間をみじめな気持ちで過ごしました。

そして、やっと退社時間。黙って席を立って会社を出ました。

「自分の居場所はここにはない。」

そんなことを強く感じる一日でした。

 

仕事は？

次の日も会社へ行きました。

会社に着き、黙って席に座り、「今日は何をしようかな。」なんて考えていると、私のことを上司が呼びます。

そして、仕事を与えると言われました。

それは、派遣先だった会社にいるメンバーのサポートです。

具体的には、派遣先は後任者や、他のメンバーが私の後を継いでいますが、保守・運用を行っているシステムに詳しいわけではありません。

そのため、わからないことや困ったことがあった場合、私が電話でサポートするというものです。

といっても、私はほどんどすることはありません。ほとんどの作業は手順書を作成したので、よっぽどのことがない限り、現地のメンバーで出来ないということはないのです。

そもそも、派遣先の後任者がわからないことがあったら、私に電話してくるということは、後任者が決定していたときから決まっていたこと。

しかも、私が電話でサポートすることになったという事実を、派遣先のメンバーは知りませんし、教えるつもりもないとのこと。

当然、私が電話でサポートすることに対する費用はお客様からもらっていません。

私は無駄な経費です。

そして、私の部署が暇かというと、決してそんなことはありません。むしろ非常に忙しく、残業も問題になりそうなぐらい多いという状況。

それでも、私にはその仕事を担当させることはしない。

会社の中では、問題社員として扱われているようです。結局その扱いは、私が会社にいる間は続いていくこととなります。

でも、それよりも、私にとっての悲劇ともいうショックな出来事が発生します。それは週末の出来事です。

 

心療内科での事実

私のうつ病はというと次のような状態です。

・寝つきは非常に良いが朝4~5時には目が覚めてしまう。でも、昼間は、それほど眠くはならない。

・常に不安を強く感じていて、時々喉がつかえる感じがある。

・やる気が起きず、何をするのもやっとな感じ。

・時々すごく調子のいいときがあり、不安なんかもほどんど感じない状態の時もある。

ほぼ毎週土曜日に心療内科に行って、主治医と会話をすると、気持ちがだいぶ楽になります。

それがせめてもの救いでした。

自社へ戻ってからのことも、もちろん主治医に話をしています。

主治医からは、しばらくは様子を見た方がよいと言われ、そのとおり、会社へ通っていました。

そんな中、いつものように心療内科へ行きました。

いつもどおり、私は今週あった出来事を話し、主治医からのアドバイスをいただきます。しかし、最後に重大な事実を告げられます。

主治医は申し訳なさそうに、今月で辞めることになったと言いました。そして、今後は、別の医師が見ることになるとのこと。

このことは、非常にショックでした。

薬だけ処方されるのではなく、カウンセリングとまではいかなくても、話を聞いてもらえるし、相談に対して答えてもらえる。

そして、主治医とは相性がいいと感じていました。人と話をするのが苦手な私がこんなにも話すことができるなんて、他の医師ではいないと思っています。

それなのに、主治医が辞めてしまう。

私の暗闇を照らしていた、大切な光が消えてしまう。消えてしまうと、私は暗闇の中にたった一人。

この先どうすればよいのかが、わからなくなってしまいました。

でも、私には主治医が辞めるのを止めることができるわけもなく、ただ主治医が辞めるという事実を受け入れるしかありません。

でも、主治医が辞めてしまうことで、私の人生にも大きな転換期が訪れるのでした。

（続く・・・私が転職を決断した時のこと）